(天声人語)東大入試中止から50年
2019年1月20日 日曜日
札幌市に住む大坂谷吉行(おおさかやよしゆき)さん(68)は高校3年生のときに受け取った一通(いっつう)の手紙を今も大事に持ち続けている。送り主は東京大学。黄(き)ばんだ紙にはこう書かれている。「まことに不本意(ふほんい)ながら、今年度の入試を中止することといたしました」
▼今から50年前、東大は学生運動のうねりに揺れていた。学生に占拠(せんきょ)された安田講堂が機動隊(きどうたい)の突入で「落城(らくじょう)」したのが1969年1月19日。翌(よく)20日、前代未聞(ぜんだいみもん)1の入試中止が決まった
▼東大を目指して必死に勉強していた受験生からすれば、不条理(ふじょうり)な決定だった。当時の新聞を見ると、入試実施を求める浪人生(ろうにんせい)のデモや訴訟騒(そしょうさわ)ぎも。「結局、受験生という一番弱い立場の人間に混乱のツケが回された」。大坂谷さんは怒りの感情とともに何もする気がなくなったと振り返る。
▼地元の北海道大学に進んだが、もやっとした気持ちが残った。「自分の実力を証明したい」と東大の大学院に進学し、博士号を取得(しゅとく)。室蘭(むろらん)工業大学の教授などを務めた後、昨年、自らが苦汁(くじゅう)をなめた入試中止の歴史をもっと知ってほしいと小説の形にして自費出版した
▼きのう大学受験のセンター試験が始まった。これまでの努力が試(ため)される緊張のとき。うまくいった人には祝福を。そうでなかった人も悲嘆(ひたん)するのはまだ早い
▼そもそも人生は寄り道、回り道。「時には想定外のこともある。でも悪いことばかりじゃないさ」と大坂谷さんも力強く言っている。君たちを応援する人は案外多い。もちろん筆者もその一人である。
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